【フラッグ世界選手権DAY4】女子日本代表、劇的逆転で堂々の銅メダル獲得
フィンランド・ラハティで開催されているIFAF主催フラッグ世界選手権は現地8月30日、大会最終日を迎えた。3位決定戦に回った女子日本代表はオーストリアと対戦し、41対40の逆転勝利。2018年に各チームから選抜され日本代表を結成して世界大会に参加するようになってから初のメダル獲得を果たした。
11・12位決定戦に臨んだ男子日本代表は、ドイツに39対26で勝利し、11位で本大会を終えた。
【女子日本代表】目標のメダルゲームでオーストリアに劇的な勝利
女子日本代表は目標だったメダル獲得のチャンスを得た。3日で7試合、いずれも激戦を乗り越えて掴んだチャンスだが、消耗も激しかった。ここまで女子日本代表の守護神と呼ぶにふさわしい活躍で守備を支えてきたDB山本深由奈の膝にはテーピングが巻かれていた。この試合は基本的にベンチで見守る方針になった。
対戦相手のオーストリアは2022年のザ・ワールドゲームズ(TWG)で対戦し、点の取り合いに持ち込みながら32対39と1ポゼッション差の惜敗を喫した相手。3位決定戦は女子日本代表が成長を証明する絶好の相手と舞台となった。
女子日本代表は、迷いなく持てる力を発揮して躍動した。オープニングプレーでWR近江佑璃夏がいきなり16ヤードを前進するラン、そして2プレー目にQB磐田千紘から26ヤードのロングパスを捕球。わずか2プレーで先制する速攻を見せた。
2回目の攻撃機会も、QB磐田からWR中畑友里へのパス、WR八木智代のランで前進し、WR八木のTD捕球で得点を挙げたが、オーストリアの攻撃も一歩も引かず。前半は14対19でオーストリアがリードしての折り返しになった。
後半、先に仕掛けたのはオーストリアだった。前半は確実なミドルパスを中心にした組み立てだったが、後半開始のプレーでいきなりディープを狙ってロングパスでTD。一進一退の攻防からオーストリアにモメンタムが傾きかけた。
しかし、女子日本代表の集中力は切れなかった。QB磐田からWR近江、八木、中畑へのパスは止まる気配はなく順調に前進しすぐに得点を返す。
35対40。1ポゼッション差を追う展開のまま迎えた残り時間1分40秒からのドライブは見事だった。QB磐田のパスとレシーバーのランを織り交ぜて前進し、最後はC森永瑚雪へのTDパスでついに41対40と逆転。残り時間は40秒。守備に課せられたのは、この1点を守り抜くことだった。シリーズ更新線(=25ヤードライン)の手前4ヤードで迎えた第4ダウン。ディープクロスを走ったレシーバーをしっかりとマン・ツー・マンでカバーしたDB樋口智子が、相手の前に入りながら右腕をぐっと伸ばし、お手本のようなきれいなパスカットを決めた。この瞬間、日本の勝利が確定した。
「守備のみんなを信じて守り抜けた。これまでやるべきことをやり続けてきたことへのご褒美かなと思います」
樋口はメダル獲得を決めた1プレーを笑顔で振り返った。
試合終了の笛と同時に、フィールドでは選手が作ったビクトリーフラワーが舞い、観客席では勝利を祝う琴が鳴り響いた。
「日本が世界で3位の実力であることを実証できた。次は米国やメキシコを倒せるように、明日から準備を始めていきます」
女子日本代表を率いた桑原昂司HCは、世界ランク通りの結果を残したことに安堵の笑顔をたたえながら、来年7月に中国・成都で行われるTWG、その先にある2028年のロス五輪出場へと目を向けていた。
【男子日本代表】最終戦で見せた男子日本代表の進化
前日、イギリスに逆転負けを喫した男子日本代表は11位の座を懸けてドイツとの一戦に臨んだ。
最初のシリーズ、QB森凜太朗からRB伊藤耕世へのTDパスで先制。さらドイツの攻撃をミッド・フィールドでLB植松遼平がインターセプト。このチャンスをWR松尾良知のTDランにつなげた。その後も松尾とWR池井勇輝のランTDで加点。守備ではDB磯野元浩がインターセプトをするなどドイツを圧倒し、前半を27対6で折り返した。
後半になっても日本代表の勢いは衰えず、39対26で勝利した。
「目標にしていたメダル獲得に届かなかったことはとても悔しい。もっと力をつけて、メダルを懸けて試合ができるように成長して戻ってきたい。そのためにも、もっと多くの人にフラッグを知っていただき、日本代表の中で競争が起きるような環境を作っていきたい」
男子日本代表をまとめてきた主将の植松遼平は、日本における競技の発展と強化に向けて前を向いていた。